2019年5月3日

男が泣く

 ヤクザのナムス(ソン・ヒョンジュ)が癌で余命宣告を受けた。気になるのは、かつて兄弟分だったジョンギル(ソン・ジョンボム)が愛した女性とその娘のこと。7年前、ナムスは会長(キ・ジュボン)の命令でジョンギルを殺害したのだった。ヨンチェ(チョ・ミリョン)が営む民宿を訪れると、彼女は借金の返済を迫られている。ナムスはせめて罪滅ぼしをしたいと願うのだが……。


 韓国の映画やドラマでよく描かれるヤクザの悲哀。定番ともいえる物語ですね。KBS脚本公募の当選作で、とりたてて目新しさはないものの、じわりと沁みるヒューマンドラマでした。ソン・ヒョンジュ、チョ・ミリョンと地味なキャストですが、ぴったりな配役です。ナムスの部下で、ある意味で同じ道を辿ることになるソング役は、この頃よくドラマに出ていた現代舞踊家のイ・ヨンウ。


2019年5月2日

第7曜日

 深夜、入院中の女性患者が肛門の写真を撮影された。急な検査と言われたというが、看護師のヨニ(コ・ウンミ)は不審に思い、犯人を捜しはじめる。まもなく職員のひとりが犯行を認めるが……。


【ネタバレ注意】なんだか釈然としない話……。真犯人は尻マニア(パソコンに大量の尻画像が!)の恋人サンヒョン(キム・ミンソン)だったようですが、それを知ったうえで主人公ヨニ(コ・ウンミ)のとった行動が理解できません。犯人と知りつつ「医師の妻」になりたいがために真相を闇に葬ったというわけでしょうか? 前半に友人から「男に恩を感じさせれば、借りを返そうと大事にしてくれる」と言われる場面がありましたが、それを実践したということ? いずれにしても、ひどい。まるで共感できない結末でした。
 ユラ(キム・ヘジン)という恋人の元カノの登場も、本筋には関係なく、どうしても必要なものではないでしょう。なんだかすっきりしません。そもそも「肛門を撮られた」という設定の意味がわかりません。それって尻マニアの嗜好とはイコールじゃないと思いますし……。のちにマクチャンドラマを書く脚本家ならでは、でしょうか。


2019年5月1日

隣の家のおばさん

 ビョンフン(イ・テソン)は、就職もうまくいかないうえに、恋人のソヒ(チュ・ミナ)を友人のミンチョル(ホン・ワンピョ)に奪われた。そんなある日、隣の部屋に住むミジュ(ソヌ・ソン)と知り合う。ミジュは夫からDVを受け、人生をあきらめかけていた。やがてビョンフンはミジュの境遇を知り、放っておけなくなるが……。


 若者がワケありの人妻に寄せる恋の物語、でありながら、夫の死をめぐるミステリ的な展開も。イ・テソンはすでに映画『あなたを忘れない』で主演もつとめてますが、初々しいというか、ちょっと頼りない主人公を頼りなさげに演じてます。はかなげな美人妻に扮するのはソヌ・ソン。切ないストーリーです。
 KBS WORLDでの再放送を観ましたが、2011年に『私と彼が夢見た日々』というタイトルでDVD化されてました。


2019年4月30日

届きそうで届かない

カーリング選手のヨンジュ(パク・ユナ)は原因不明の耳鳴りを抱え、そのせいでチームが負けてしまった。故郷の義城郡に戻って地元チームに移籍すると、そこには、かつて憧れていたソンチャン(キム・ミンソク)がいた。2人はミックスダブルスでペアを組むことになるが、歩み寄ろうとするソンチャンに、ヨンジュは冷たい態度をとる。ヨンジュにとってソンチャンはカーリングをはじめたきっかけであると同時に、実は耳鳴りの原因でもあり……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、ラストを飾った作品。平昌オリンピックで人気を集めたカーリングが題材になってます。
 キム・ミンソクが飄々とした持ち味を出してますが、結末がはっきりとわからなくて、いまひとつ……。演技ではないっぽい笑いあう2人のラストカットはよかったんですけどね。


2019年4月29日

君と僕の有効期間

30歳になったヒョンス(シン・ヒョンス)は地下鉄の市庁駅でスンヨン(イ・ダイン)と10年ぶりに再会した。大学時代、ほのかな想いを抱きながら告白さえできなかった相手。ヒョンスは10年前を思い出しながらスンヨンの今が気になるが……。

 2018年の「KBSドラマスペシャル」、9作め。いちばんよかったかな。
 主演のシン・ヒョンスは「青春時代(恋のドキドキシェアハウス)」で見たばかりで、好感度大。当て書きだそうで、なるほど、ぴったりの役柄でした。スンヨン役のイ・ダインは、キョン・ミリの娘で、イ・ユビの妹。渡辺麻友に似てますね。先輩役のミン・ジヌンも、お調子者ですが、いい役でした。
 ヒョンスとスンヨン、2人の出会いはMP3プレイヤーの取り違え。スンヨンのMP3プレイヤーには、動物園、ユ・ジェハ、キム・グァンソク、トゥルグックァといった懐メロ的な曲が入っていて、一方のヒョンスのMP3プレイヤーにはWonder Girlsの「Tell Me」やJEWELRYの「One More Time」といった当時(10年前の設定で、2008年)の曲が入ってました。そして、モチーフになっているのが、동물원(動物園)の1990年の曲「시청 앞 지하철역에서(市庁前地下鉄駅で)」。この不朽の名曲がやっぱり効いてます。もちろんリアルタイムで思い入れがあるとかではないですけど。
【ネタバレ注意】哺乳瓶もミルクもそれぞれ甥っ子のため、と誤解がとけるラストが微笑ましく、ほっこりします。“有効期間”のない思い出……というわけで新たな可能性を感じさせ、ハッピーエンドといっていいんじゃないでしょうか。後味のよい青春の物語でした。

2019年4月28日

赤いアメ

 出版社に勤めるジェバク(イ・ジェリョン)の唯一の楽しみは、同じ電車で通勤する取引先の書店員ユヒ(パク・シヨン)を見ること。妻子ある身のジェバクは、ただ見つめるだけで声をかけようとはしない。ユヒはそんなジェバクに好感をもち、2人の交際がはじまった。しかし、同僚のヨンフン(ミン・ソンウク)が、ユヒのせいで身を滅ぼした男がいると……。ジェバクはそんな噂を信じたくなかったが……。


 2008年に「ドラマシティ」が終了して2年、新たな短編ドラマ枠としてはじまった「ドラマスペシャル」の第1弾。名匠ノ・ヒギョンの脚本で幕を開けましたが、不倫のドラマってまったく感情移入できないので……。どんな言い訳を並べたところで最初からアウトなわけじゃないですか。ジェバクが「嘘ついてないか?」とユヒを問いつめますが、おまえが言う?みたいな。自分からつきまとって、一線を超え、相手の話も聞かず勝手な思い込みで去って、最後には【ネタバレ注意】ユヒが死んだと聞いて号泣……何それ。「隣の家のおばさん」のようにDVに怯えているとかだったら同情の余地もありますが、勝手に息子の留学を決めた妻への不満はあるにせよ、生まれたばかりの娘もいて、ごく平凡な境遇にあるのに。ジェバクはたんに身勝手な男にしか思えないのでした。ユヒのほうに目を向ければ、父を亡くして生活が一変したらしく、兄との縁も切ろうとしていたことがうかがえて、かわいそうではあるのですが。
 劇中に流れるのは、Cold Play「Yellow」、BLUR「No Distance Left To Run」、Radio Head「Fake Plastic Trees」といったオルタナティヴなロックでした。

2019年3月31日

ママの3回目の結婚

 母のウニョン(イ・イルファ)が再婚すると言いだした。ウニョンは18歳で出産したが、娘のウンス(イ・ヨルム)は幼い頃に祖母(キム・ヨンオク)に預けられて育った。今回が3度めの結婚。ウンスは自分勝手な母に嫌気がさしていた。そして、出会ったばかりのガンウ(ヨン・ジュンソク)を誘惑するウンスには、ある計画があって……。


 2018年の「KBSドラマスペシャル」、8作め。
 主人公のウンス役を演じるイ・ヨルムは「家族を守れ」で知りましたが、ちょっと勝気、でも実は繊細な心をもっているという娘役にぴったりですね。
 娘の計画と、母の隠しごと――まぁ想像のつく展開ではありましたが、親子の感動物語。【ややネタバレ注意】「何回寝たら会いに来てくれる?」という幼いウンスの言葉を、最後、母であるウニョンが口にするところ、うまい脚本です。